当事務所閲覧者は中国税制について下記論文をご参考にしてください。多少専門的ではありますが経済大国世界大2位のGDP国家としての中国を実務面から考察する機会にしていただきたく存じ上げます。

 

研 究 報 告 書 

  論題「中国の税務代理制度の形成過程と現状分析」  著作権者 税理士 加藤秀雄

                                       20104

 

(A)中華人民共和国の租税徴収制度歴史的背景(利潤上納方式から所得税方式

(B) 中華人民共和国における税の専門家としての税務代理人制度の形成過程と国家管理

(C).中国税理士と公認会計士の職域 

研究結果

残された課題

結語

序    論

 

西暦2000年後を振り返れば、ネット社会の到来とともに税務会計情報が瞬時に国境を越え相互交換できる時代になり税理士といえども、情報科学の知識は不可欠な時代になっている。広い視野に基づく国際的観点によるパラダイム転換が必要である。ドイツのハインツ・セビガー(Dr. Heinz Sebiger)氏 (注[])は平成13年7月の来日講演にて、国家資格としての税理士を職業法に結びついた純粋な自由業として規定している国は、日本、オーストリア、そしてドイツであると述べている、現在は経済発展の著しいアジア地域、特に中国の税務代理制度の研究をする必要がある。なぜなら外貨準備高において2009年6月現在,米ドル130,100(@100USD換算)で世界の30%を保有する経済大国である。

中国は計画経済から公有制を主体とする市場経済体制樹立という経済メカニズムの転換の中で、会社法(中国公司法)を1993年12月に制定した。国有企業を市場経済の主体として育成するため株式制度化する(国有企業の資産を計算し株式に換算する)現代企業制度の確立に重点を置いた。しかし公有制市場経済の原則のなかで発行済株式の60%以上を国有持株会社が保有し、株式会社との間で支配従属関係が形成された。(注[])。

現在の中国独特の租税法はこのような経済メカニズムの転換とともに整備されたのであることを明らかにする必要がある。中国経済におけるパラダイム転換にて公有制経済から社会主義市場経済へ、さらに1997年の第15回党大会から社会主義現代化建設の新世紀に向かっての比較的完璧な市場経済体制を全面的に構築する方向に向かっている。中国の税務代理制度を研究する時、租税法の歴史的経緯を研究せずに現在の中国租税体系や税務申告書のみをみることは中国企業を理解することにはならない。実務的には現在、J-sox法に対応して中国連結子会社の財務会計プロセスが日本側から見えない等の内部統制問題、日本本社と中国子会社との勘定科目不整合や、異なる税制における税務問題が海外現地法人設立時点から発生しているが、それには税務会計制度の歴史的背景を探る必要がある。日本の経済発展のために外国法人が日本国内にて日本現地法人を設立する場合にも、担当税理士は日本の税理士制度について海外の投資家にその背景や会社法について啓蒙する必要があると思われる。

(A)中華人民共和国の租税徴収制度の歴史的背景(利潤上納方式から所得税方式へ

  1949年中華人民共和国成立後、公有制を主体とする国有企業は計画経済における利潤上納請負制であった。国有企業の資金源泉は国家の企業への資金提供、人民建設銀行からの借入金であり、生産財・資金・利潤の最終所有権は中国財政部にあった。1983年〜1984年国有企業改革の中で「利改税」では、国家所得税率55%として利潤上納請負制から近代的法人税制への転換をはかったが、企業経営努力が反映されず挫折した。 

1987年、経営請負制が開始されても、経営自主権は確保されず上納請負利潤に対して55%と調整税が課税された。1991年8月18日、財政部と国家経済体制改革委員会が公布した国営企業実施「税利分流、納税後借入金返済、納税後経営請負の試行法《国业实税利分流、税后还贷、税后承包法》」では財政部の中で、税収を管理する国税総局にて所得税55%から33%と減税されたが、国有資産管理局は上納利潤を徴収したので、最後に財政部が財政資金を統一分配する権限を保持するという財政管理と資産管理部門が未分化状態であった。(注[]) 


1992年のケ小平主席の広州・上海等での南巡講話により、社会主義市場経済が浸透するとともに中華人民共和国外国投資起業法と外国企業所得税法(企業人民共和国外商投和外国企所得税法主席令[1991]にて中国に海外投資が増大した。その後「公有制を主体とする近代的企業制度は社会主義市場経済体制の基礎である」とする国有企業の経営自主権を拡大する改革の中で、19931229の会社法(第八届全国人民代表大会 中人民共和国公司法)の制定とともに中華人民共和国企業所得税法(人民共和国企所得税行条例 国院令[1993]137号)等を国内企業に制定した。従って外国企業に対する所得税法の法制化が先んじていたのである。国家上納利潤制を別にすれば、国税としての税務行政概念は「利改税」時代から27年以上といえるのである。

社会主義市場経済体制により国営企業の株式会社化という経済体制の変革をもたらすなかで、国営火力発電集団企業である中国華能集団公司が1994年8月4日米国にて上場決定したが、ニューヨーク証券取引所は上場に関して国有資産を株式化して上場することへのアメリカ証券取引委員会 (SEC)の懸念と、中国国内での国有資産の流失問題が浮上し、会計制度の矛盾を露呈した。(注[1])その後は私的所有権を民法にて保証する西側資本主義自由経済圏の税務会計制度に移行しつつある。例として中国第10期全国人民大会第5回会議で、中華人民共和国企業所得税法(中人民共和国企所得税法2007年3月16日第十届全国人民代表大会第五次会)が採択され中国における内資系企業と外資系企業との異なる税法を適用する17年間の税制は終焉し、外資系企業の優遇税制の適用は撤廃された。外国投資企業(三資企業:合弁企業・合作企業・独資企業)および中国に支店等を有する外国企業と中国企業との企業所得税法が2008年1月1日から統一された。外国投資企業の優遇税制である2免3減の適用を5年間の暫定措置をおいて税率25%に統一した。

 

(B) 中華人民共和国における税の専門家としての税務代理人制度の形成過程と国家管理

1.税務代理人の専門家としての名称

日本国の国家資格を有する税務代理人は税理士、中国の国家資格を有する税務代理人は中国語表記の簡体字务师」である。繁体字「税務師」であるが本論文ではともに税理士と記載する。また本論文では法規等の日本語翻訳文は、法解釈上原文中心で考察する。したがって、中国税理士資格制度臨時規定は、注册税务师资格制度定を参照されたい。また同規定第四条によれば税理士の英文翻訳はRegistered Tax Agentである。

2.中国の税務代行の成立時期

中国の税務の代行は20世紀の80年代の後期に始まる。全国で税徴収制度の研究に着手し、いくつかの地区で税務機関は外国の税制を参考にして、徴収管理領域、税務代理業務実行に役立つ試行を行った。結果として、企業の税関連事務負担を軽減することができ、納税するコストを下げ、更に合法的権益を守りながら、同時に国家の税収利益と税法実施を保証することができ、徴税するコストを下げ、税徴収の能率を向上させ、国家の経済体制の改革の動きに適応して、納税者と税務機関の活性化を促進させた。

 19929月4日、7期の全国人民代表大会常務委員会の第27回の会議にて税務代理制度導入を中華人民共和国国税徴収管理法第89条《人民共和国税收征收管理法》(以下が《税收征管法》と略称す)。「納税者は、税務代理人に委託して税務を取り扱うことができる」として税務代理業務の創立と発展に法律的根拠を提供した。19949月16日、国家税務総局は国税徴収法《税收征管法》と実施細則の関連規定によって、税務代理試行法《代理》を制定した。2005916税理士管理暫定法(注册税务师管理)を制定、さらに19961122日に人事部、国家税務総局は共同で中国税理士資格制度臨規定《注册税务师资格制度》を発布して、税理士資格制度を実行することを開始した。その後、税務代理人は国家の専門技術者として業務資格に組み入れられ、仲介サービス業として発展する新しい段階に入った。19998月、党と政府機関は、国家税務総局が全面的に税務代理業務を整理することを決定し、中国税理士制度を改めて「中国税理士が出資する有限責任制あるいは合資制の税理士事務所」とした。

中国はWTO加盟(20011111日施行)により外国資本に対する投資利益の保護を目的に中国の会計市場に国際慣習と国際会計準則を取り入れて、外国投資家のためにその規範に合う公認会計士のサービスを提供するために大きな会計監査の需要が発生した。中国税理士は税務申告において公認会計士の監査証明書が必要である。 公認会計士は会計報告書を監査して、監査報告書を発行し、企業の資本を検証する監査業務が主たるものである。

税務専門家としての税理士について、新華ネット北京の200615日のニュース によれば「国家税務総局は、1996年税理士資格制度を実施してから、全国で税理士資格統一試験はすでに8回催され、税理士業務資格を得たものが66,849人である。200510月末迄に、全国に中国税理士事務所は2,926があり、従業員はすでに10万人近くになった。しかし現在、業界全体はまだ初期発展段階であり、管理制度、組織・機構・監視・管理の実施まですべて完全には社会主義市場経済体制において、税徴収と良好な管理体制転換への要請に応じていないので、早急に更なる法制化を行わなければならない状況である」と報じている。(Copyright 2004 BJSAT of China   北京市国家税局版所有 http://www.bjsat.gov.cn/contentpage/article.jsp?InfoID=25550 布日期:2006-05-10

 

3.中国税理士の資格制度(資格の付与機関)と業務範囲

()税理士法は税理士資格制度臨時規定  (注册税务师资格制度定)を定めている。

1条 税務専門技術者の業務の管理強化のため、税務代行行為規範、税収活動における税務代行の役割を発揮して、国家税収法律、行政法規の執行を貫徹することを保証して、納税者、納税義務者の合法的権益を守って、根拠《中華人民共和国税徴収管理法》及び実施細則、および職業資格証明書の制度の関連規定、当臨時規定を制定する。

第2条  国家は税務代行活動に従事する技術者に対して登録制度を実行する。この規定にて中華人民共和国の税理士業務登録資格証を取得して税務代行活動に従事することができる。

第3条    税務代行業務に従事する仲介業務機構は税理士事務所で、税理士事務所は必ず一定の税理士を配備しなければなりません。 第4条 税理士資格制度は職業資格証明書の制度の範疇に属して、専門技術者の業務資格制度の統一計画に組み入れられ、国家の許可確認により人事部と国家税務総局はともに全国の税理士資格制度政策制定、組織調和、資格試験、登録登記と監督管理の共同責任を負う。

() 税理士の業務範囲はa.中国税理士資格制度臨規定《注册税务师资格制度》とb.税理士管理暫定法(注册税务师管理c.税務代理業務規定代理业务规程(行) 2001108
にて規定している。

中国の税務申告は税務登記に始まると言っても過言ではない。全体の税徴収管理で最も重要である。納税者の基本的な情況と生産経営プロジェクトを管理する基本的な事項を登記すると税務機関で納税者はすでに税務機関の監督管理に置かれることになる。法律、法規によって課税収入、課税財産あるいは各種の課税対象の納税者は関連規定によって税務登記をする必要がある。 個人の独資企業、1人有限会社も税務登記をする必要がある。税務登記は変更を含めて各種存在する。

中国の税務申告には各規定に納税人の税務登記申請が記載されている。日本の税理士法33条税理士法第33条の2第1項 税理士は、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。企業所得税は納税する年度によって計算する。納税する年度は西暦の11日から1231日まで。 税務代理権限証書添付とは異なる。中国税理士試験は増値税・消費税営業税等の間接税が税法(1)に、直接税である法人税(原則国税)・個人所得税(地方税)等 が税法(U)に区分されている。

@     法人税申告は日本と異なり企業は四半期終了日から15日以内に税務機関に企業所得税納税申告を提出し、暫定納税をする。 企業年度終了日(12月31日)以降5ヶ月以内に税務機関に年度企業所得税納税申告書(中国語でを提出し、この確定申告にて納税清算する。従って中国法人税法にて申告期限は、4半期分は1月15日・4月15 日・7月15日 ・10月15日。年度申告期限は5月31日となる。企業所得税の税率は25%であり中国第10期全国人民大会第5回会議で、中華人民共和国企業所得税法(新企業税法)は採択され、中国における内資系企業と外資系企業との異なる税法を適用する17年間の税制は終焉した。公布日以降成立した企業は外資系企業の優遇税制の適用はできない。 既に成立済み 企業に対し5年間の経過措置あり。外国投資企業((三資企業:合弁企業・合作企業・独資企業)および外国企業:中国に支店等を有する)と中国国内企業の企業所得税法を2008年1月1日から統一し外国投資企業優遇税制であった、設立後2年免税3年減税の適用を5年間の暫定措置をおいて、税率25%に統一した。   

A給与や賞与の給与所得は課税期間が各月1ヶ月間であり、会社が毎月の源泉徴収による納税と個人所得税の申告書を地方税務局に提出し、毎月完結するため日本の年末調整や確定申告に相当する制度はない。

個人所得税税率表1(賃金・給与による所得に適用)
1993.10.31改正。

毎月の課税所得額

税率(%)

1

500元を超えない部分

5

2

500元以上2000元までの部分

10

3

2000元以上5000元までの部分

15

4

5000元以上20000元までの部分

20

5

20000元以上40000元までの部分

25

6

40000元以上60000元までの部分

30

7

60000元以上80000元までの部分

35

8

80000元以上100000元までの部分

40

9

100000元を超える部分

55

(注:この表の全月の課税所得額とは、この法律第6条の規定に従って、毎月の収入より費用としての800元を控除した後の残額もしくは追加控除費用を控除した後の残額とする。)

B個人経営工商業者の生産と経営による所得の納税額は、年度ごとに計算し、月ごとに予納する。納税義務者が 翌月7日までに予納し、年度終了後3ヶ月以内に合算して、精算納付し予納の過少を調整する。経費等の領収書は税務機関から有償にて購入する。

個人所得税税率表2(個人経営工商業者の生産と経営所得と企業、事業機関、組織に対する請負経営、リース借受経営所得に適用)
1993.10.31改正。

毎年の課税所得額

税率(%)

1

5000元を超えない部分

 5

2

5000元以上10000元までの部分

10

3

10000元以上30000元までの部分

20

4

30000元以上50000元までの部分

30

5

50000元を超える部分

35

税理士顧問料は国家統一規定標準によって代理費用を受け取る。

a.中国税理士資格制度臨時規定《注册税务师资格制度

20条 税理士が納税者、義務者の依頼を受けて納税し、下記の範囲内の業務の代理をする。

1.税務登記を処理し、税務登記を変更し税務登記を取り消す。

2.増値税の専用の領収書以外の領収書を購入する手続きをする。

3.納税申告または税金を納めることを取り扱う。

4.納税と還付申請する処理。

5.税関連の文書作成。

6.納税情況を監査。

7.帳簿制度を定め、帳簿事務処理をする。

8.税務のコンサルティングで、税務顧問の依頼を受ける。

9.税務行政再議。(税務不服審判)

10. 国家税務総局規定のその他の業務。

b.税理士管理暫定法(注册税务师管理

22 中国税理士は税務登記、納税と還付、還付税申告、帳簿記帳を提供し、増値税の一般納税人の普通納税代理資格申請をし、ホストコンピュータを利用してサービスシステムを共有し、増値税の普通納税者のために増値税専用の領収書にて税務申告書を作り、また税務顧問、税収計画、税関連育成訓練などの税関連の代理サービス業務をする。

c.税務代理業務規定代理业务规程(行) 2001108
フォームのまり

   税務の代行の業務の範囲

3
1. 
税務登録、税務登録変更および取り消しの手続き。
2. 
増値税専用領収書の購入手続き。
3.  .
税金の申告納税手続きおよび納税報告。
4. 
税金納税および還付手続きの申請。
5.
税関連の文書作成。
6. 
納税情況の審査。
7. 
帳簿制度、記帳業務の取り扱い。
8. 
税務コンサルティング、税務顧問を受諾。
9. 
税務の行政再議の手続き; (税務不服審判手続)

10)国家税務総局規定のその他業務。フォームの終わり

 

中国税理士の資格制度にみる独立・公正及び顧問料の問題は中国でも共通の問題であり、法制化が進んでいる。税理士資格制度臨時規定 (注册税务师资格制度)によれば、

第19条 税務代理活動の中で、税理士は納税義務者が自らの意思で委託納税すること前提にするべきで、国家の税収法律、行政法規と行政の規則を守って、独立、公正に業務を実行して、国家利益を守り、依頼人の合法的権益を保護する。

第23条 税理士は代理業務の需要において、被代理人の関連財務会計資料と書類を監査して、業務の現場と施設を調査する。依頼人は代理人に真実な経営状況と財務の資料を提供しなければならない。

第24条 税理士は業務を受諾し、税理士事務所が統一的に受理し、そして委託代理協定書を締結して、国家統一規定標準によって代理費用を受け取る。

また税理士事務所業務報酬費用管理法务师所服管理2009215日起

第九条 市場価格で税関連のサービスの業務を実行して税理士事務所から料金基準の範囲を出すべきで、具体的な標準は税理士事務所と委託人が協議して確定して、以下の主要な要素を考慮する

  1.消費する勤務時間
  2.税関連のサービスの業務の難易度
  3.依頼人の負担能力
  4.税理士の将来リスクと責任
  5.税理士の社会的信用と仕事の精度など

    4. 中国税理士の国家管理と中国税理士協会

税理士管理暫定法(注册税务师管理法》2005916制定)、「税理士に対する管理強化のため、税理士は市場経済活動の中での税関連業務の従事と監査作用を発揮し、国家の税収利益を保障して、納税者の合法的権益を守り、《中華人民共和国の税金徴収管理法》と実施細則などの関連の法律、行政法規によって、当法律を制定する。税理士協会は税理士と税理士事務所の構成の業界自己規制性の社会団体である。中国税理士協会は税理士と税理士事務所の全国組織である。省、自治区、直轄市、計画的財政上独立市の税理士協会は登録する税理士と税理士事務所の地方組織である。税理士協会は法律に基いて法人資格を得る。税理士は全て税理士協会に加入しなければならない。」としている。従って本法の税理士協会と1996年制定の中国税理士資格制度臨規定《注册税务师资格制度》の資格制度との二重構造にて国家管理する日本の現状と類似している。

(C).中国税理士と公認会計士の職域 

1999年10月、国務院弁公庁は(経済監査類社会仲介機関の通知)于清理整顿经济鉴证类社会中介机构的通知 1999年10月31日 国办发〔1999〕92号)を発表して、分類合併の原則にて、税務代理業界の支持を得た。特に国務院の指導にて20004月に税務代行と公認会計士の業界の合併を実行する決定を作り出した。1993年10月31日通過した公認会計士法第14四条によれば、公認会計士は次の監査業務をする。(1)企業の会計報告書を審査して、監査報告を発行する(2)企業の資本を検証して、資本報告を監査する。税理士は税務申告、公認会計士は会計監査である。中国の新会社法第165条によれば中国国内で設立する有限責任会社と株式有限会社は、会計年度終了時に財務会計報告を作成し会計士事務所の監査証明書が必要である。 外国法人の中国支店等も同様である。従って税理士事務所内にて公認会計士が監査業務に従事するのは税理士が地方税務局等に税務申告する上で、監査証明書の添付が会社法にて必須条件だからである。

 

 

研 究 結 果

 

(1)中国の税務代理制度の形成過程

ケ小平主席は中国の社会主義市場経済に外国投資を積極的に導入した。マクロ経済学の投資乗数効果により国内に消費・有効需要・国民総生産の増加をもたらした。さらにその後の経済発展は中国の税法・税務代理人制度の発展の原動力にもなった。また 中国は19949月、税務代理試行法《代理》を制定以降、19961122日中国税理士資格制度臨規定《注册税务师资格制度》を制定した。その後WTO加盟(2001年11月11日加盟発行)により200516に国務院で議決された税理士管理暫定法(注册税务师管理)を制定、税理士資格制度を施行した。

中国税理士事務所は有限責任公司か税理士合資制で。現在日本では2001年の税理士法改正により開業税理士、税理士法人の社員税理士、補助税理士に区分されているが、中国では有資格者は法人社員、又は合資制企業のパートナーであると思われる。

 

(2)現状分析

法律上中国税理士は税理士管理暫定法にて税理士協会(例;市注册税务师)に加入する義務がある。さらに同規定にて顧問料は国家統一規定標準にて守られている。低額顧問料等の過度な広告宣伝も規制を受けている。中国税理士の英文名が「Registered Tax Agent.」として中国税理士資格制度臨規定に条文化され、また税理士証票にも記載されて資格がグローバル化していることにも印象づけられた。

中国は2001年のWTO加盟と前後して現在電子政府の建設途中にあり、1994年、商工業の税収の制度を改革し流通税である増値税を主体の納税制度にした。増値税は領収書の偽造を除けば税収管理するのに都合のよい税収(中央政府75%・地方政府25%:徴収は国家税務局)である。そこで199421日、国務院副総理、朱鎔基は増値税を電子申告化するべく金税プロジェクト(中国名;金税工程)を計画し、199868日、提案書を国務院にて議決させ、国家計画委員会のもとに開始させた。著名なコンピュータ関連会社である長城グループ(中国名は城集,)は電子部、宇宙工業総公司、財政部、国家税務総局等の協力のもとに情報技術部門を務担当している。 また中国人民銀行は増値税の専用の領収書の偽造防止に衛星通信手段を提供している。現在、中国の基本ソフトウェアCTAIS(中国税務情報管理システム)が稼働し、その他の税類の申告も追随している

税務代理試行法からわずか16年経過したばかりであるが、電子申告において、2007年12月に大連新華税理士事務所有限責任会社(务师所有限任公司)にて増値税が税理士事務所からe-tax方式にて税務申告されているのを参観した。

 

残 さ れ た 課 題

 

1.中国税理士の業務の独立性と公平性

2.中国の税務不服審判手続

3.今後の電子申告の発展状況

. 中国税理士協会の役割分析

   結         語

日本税理士法には外国籍税理士試験の受験者に国籍条項はないが、中国では税理士資格制度臨時規定(注册税务师资格制度定)「外国人の税理士資格試験申請と国内での申請は税務代行業務管理方法に従い、国務院の関連部門を通じて許可した後に、別に制定する」また、注册税务师管理税理士管理暫定法)48 中華人民共和国の国籍でない税理士の資格試験に参加するには中国国内での税理士の管理方法に従い別に定める」とあり外国籍の受験者についての別規定は今後の残された調査課題としたい。また中国税理士が、独立した公正な立場において申告納税業務をなしえるかは、税務行政不服審査法《税行政复议规则200451日正式施行の施行もあり、日本における国税通達や国税不服審判所の中立性・公平性・法律専門性等の現状とよく似た問題でもある。中国の税務申告方式は外資導入政策を優先したため、1991年の中華人民共和国外国投資企業法と外国企業所得税法に端を発している。また法人税が国税、個人所得税が地方税であり、法人設立時点から税務登記にて企業の概要が税務当局にすでに把握されている

 

現在の日本経済再生への方策も中国の海外からの投資政策ではないが、魅力ある海外からの投資環境を日本国内で形成することにありそうである。そのためにも日本における税法・税理士制度等を内外の投資家や納税者に理解させる環境づくりや努力が今後さらに必要である。

 

注     記



中華人民共和国所得税法(中人民共和国企所得税2007316日第十届全国人民代表大会第五次会

 

税理士事務所業務報酬費用管理法务师所服管理2009215日起

 

 

 



[]  ハインツ・セビガー Dr. Heinz Sebiger DATEV協同組合前理事長・名誉政治学博士 ドイツ連邦共和国   税理士(Steuerberater

[]  楊秀慧 「中国会社法における少数株主保護制度について」現代企業法研究会 報告論文 2005115

[] 川井伸一「中国企業改革の研究」中央経済社、1996年 初版 107項 131項